2014年から2018年にかけての5年間は、世界情勢が大きく揺らぎ地政学リスクが投資市場に大きな影響を与えた時期となりました。当期間において投資家は金を重要な資産と位置づけ、動向に注目していました。本記事では、地政学的な不安が高まる中金市場でどのような変化が起きたのかを把握して、将来の投資戦略にどのような影響があるのかを探っていきます。
地政学リスクとは、国際的な政治や外交、軍事的な対立が経済や市場に影響を及ぼすリスクのことです。地政学リスクには、戦争や紛争、領土問題、制裁措置、テロ活動、政情不安、さらには重要資源の供給停止などさまざまな種類があります。地政学リスクが高まると、株式や通貨といったリスク資産の価値が下落しやすくなる一方で、安全資産とされる金や国債への需要は増加する傾向にあります。そのため、地政学リスクは投資家や企業によって重要な指標と見なされ、戦略的な意思決定に影響を与える要因として認識されているのです。
2014年のロシアによるクリミア併合、中東における紛争の激化、北朝鮮の核実験など地政学的に不安定な出来事が多発する時期でした。
2014年から2018年にかけて、以下のように世界中でさまざまな出来事があり金の価格も大きく影響しました。
2014年3月:ロシアによるクリミア併合
2014年後半:イスラム国の台頭により中東情勢が悪化
2015年7月:イランの核合意が成立し、地政学リスクが一時的に和らぐ
2016年6月:英国のEU離脱
2017年8~9月:北朝鮮による弾道ミサイル発射実験
2018年前半:米中貿易戦争の開始
上記のように世界的に不安定な状態になったことによって投資家の不安は高まり、リスク回避の動きが加速したのです。 特に、地政学リスクが高まると、株式市場などのリスク資産から資金が流出し安全資産とされる金に資金が流入する傾向が見られました。金は、地政学的な混乱や経済的な不確実性に対するヘッジ手段として価値が再認識されることとなったわけです。
地政学リスクの高まりを背景に金価格は2016年に顕著な上昇を見せました。1オンスあたり1,300ドルを超える場面もあり投資家からの注目を集めたのです。価格上昇は、単に地政学リスクだけでなく世界経済の不透明感やインフレ懸念なども複合的に影響した結果だといえるでしょう。 しかし、2015年から2018年の間は、比較的金相場の変動が少なかった時期でもありました。理由としては、世界経済の安定、ドル高の状態が続き、金価格相場の上昇が抑制されたこと、大規模な地政学的なリスクが一時的に低下したこと、投資家の関心が金より株式に向いていたことなどが挙げられるでしょう。
投資家たちは地政学リスクの高まりに敏感に反応し、リスクヘッジの手段として金への投資を増加させていました。また、中央銀行は2014-2018年には、ロシアや中国を始めとする新興国の中央銀行がドル依存からの脱却を図るため、外貨準備における金の比率を積極的に高めていたのです。
そのため、金が持つ多面的な価値、例えばインフレ対策やポートフォリオ全体の安定化効果に起因していると考えられるでしょう。
地政学リスクが高まる中で、投資家はポートフォリオに金を組み込むことでリスクヘッジを図るようになったのです。金は、株式や債券などのリスク資産とは異なる値動きをするため、ポートフォリオ全体の安定性を高める効果が期待されています。 また、金はインフレヘッジの手段としても認識されており、経済の不確実性が高まる中で価値が再評価されていたのです。特に、地政学リスクによるインフレ懸念が高まった際には金への投資が増加する傾向が観察されていました。
地政学リスクに関するニュースが流れると、金市場は敏感に反応しました。例えば、北朝鮮のミサイル発射や中東における紛争の激化など、地政学リスクが高まる出来事が発生すると金価格は一時的に急騰するようになったのです。
市場の反応からは、投資家が地政学リスクをいかに重視しているかが明らかとなりました。また、地政学リスクが金価格に与える影響の大きさを改めて認識させられる結果となったのです。
2014年から2018年にかけての5年間は、地政学リスクが金市場に大きな影響を与えた時期だったといえるでしょう。当期間の分析から、地政学リスクは金価格の重要な変動要因であり投資家は常に地政学リスクを意識しながら金投資を行う必要があることが明らかになりました。
また、金はリスクヘッジやインフレヘッジの手段として、ポートフォリオに組み込むことで安定性を高める効果が期待できるのです。今後の金投資においては、地政学リスクの動向だけでなく、世界経済の状況やインフレ率なども総合的に判断し、柔軟な投資戦略を立てることが肝要となるに違いありません。
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