
2021年から2023年の期間での金相場の動向を、世界的なインフレの高まりといった視点から考察します。新型コロナウイルス感染症でのパンデミックによる経済回復に伴う需要増加と供給制約、さらに資源価格の高騰が引き起こしたインフレは、人々の資産価値にも大きな影響がありました。
世界的に不安定な状況で伝統的にインフレに強いとされる金は、資産防衛の手段として改めて注目を集めたのです。本稿を通じて、インフレが金価格の変動に与えた影響を分析したうえで、金が資産を守る上でどのような役割を果たしたのかを説明していきます。

2021年から2022年は、世界的なインフレが進行し同時に金貨価格が上昇したことについて、次の3つの観点で解説していきます。
・コロナ禍からの経済回復
・資源価格の高騰と金融緩和継続
・インフレに対する金融引き締め
2021年から2022年にかけて、世界経済は新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが要因で供給制約に直面していました。各国政府による大規模な経済対策や金融緩和をしたことで需要が増えましたが、サプライチェーンの混乱や労働力不足などさまざまな問題において供給を滞らせ、世界的にインフレが加速しました。
このような状況では現金の価値は低下するため、投資家はインフレリスクから資産を守る手段を探す必要があったのです。そこで、歴史的にインフレに強い資産として評価されている金は価値が下がりにくいといったから、資産防衛を目的として需要が大きく増加しました。
世界的なインフレを加速させた要因の一つに、原油をはじめとする資源価格の高騰が挙げられるでしょう。経済活動の再開に伴いエネルギー需要が高まったことや、地政学的なリスクも資源価格上昇の要因となっています。資源価格の上昇は、輸送コストや生産コストの増加などによってさまざまな商品価格を高めたのです。
また、多くの国の中央銀行がインフレを短期的であると判断して金融緩和策を継続したことも、インフレ懸念を増幅させる要因となりました。このような状況下で、インフレによる資産価値の低下を懸念した投資家は、実物資産である金への投資を積極的に行う結果となったのです。金は希少性と普遍的な価値から、インフレ環境下においても資産保全の有効な手段として認識され、投資家のポートフォリオに組み込まれる動きが広がりました。
2022年に入ると世界的なインフレの高止まりを受けて、各国の中央銀行は金融引き締めへと政策を転換しました。アメリカ連邦準備制度(FRB)をはじめとする主要国の中央銀行は、インフレを抑えることを目的として政策金利の引き上げや量的緩和の縮小を実施しました。
一般的に、金利の上昇は利息を生まない金にとって相対的な投資魅力を低下させるため、金の価格は下がる傾向にあるのです。アメリカの利上げが本格化すると、金価格は一時的に価格が下がりました。しかし、高いインフレ率によって景気後退への懸念が根強く存在したため、金は安全資産としての側面から一定の需要を維持し、大幅な価格下落にはならなかったのです。

2023年にはいって、インフレの低下の兆しが見えましたが、金融市場は不安定な状態です。このような状態は、金の価格にも影響しています。
2023年に入ると、世界的にインフレの伸びが低下する兆しが見られました。各国中央銀行の金融引き締め政策やエネルギー価格の安定などが要因として挙げられるでしょう。しかし、インフレ率は依然として目標水準を上回る国が多く、人々の生活は圧迫された状態が続いていたのです。
インフレ率が依然低い状態において資産の実質価値を守りたいというニーズが依然として強く、金はインフレヘッジとしての役割を果たしていました。もし仮にインフレが今後さらに落ち着いたとしても、投資家はインフレの低下による不安定さを知ったことから、引き続き金のような実物資産をポートフォリオに組み込む傾向にあったのです。
2023年は、金融市場の不安定さや景気後退への懸念も金の需要が高まる要因となりました。インフレを抑えるための急速な利上げは、一部の金融機関の経営不安を引き起こし、金融システムに対する懸念を高める結果となったのです。
また、景気後退の可能性があると判断されると、株式などのリスク資産からより安全な資産へと資金を移動させる動きが強まる傾向にあります。金は、金融市場の不安定な状況や景気後退の懸念が高まる中で投資家のポートフォリオにおいて重要な位置を占めました。したがって、2023年の金価格は、インフレがやや低下した状況においても金融市場の不安定性と景気後退懸念などの要因により大きく下がることはなかったのです。
2021年から2023年の金相場を分析すると、世界的なインフレの高まりが資産防衛の手段として金の需要を大きく高めたことが明らかになりました。コロナ禍からの経済回復に伴う供給制約や資源価格の高騰がインフレを高める中で、金は現金の価値が下がったことに対する有効な対策として認識されました。
その後、依然として高水準の物価や、ウクライナ情勢の長期化による地政学リスクの高まり、さらには金融市場の不安定性や景気後退への懸念などの要因により金の価値が下がることはなかったのです。この期間を通じて、金はインフレという経済的な不安定さだけでなく地政学的なリスクや景気後退から資産を守るための重要な役割を果たしているといえるでしょう。
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