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2014-23年:10年間の金相場変動と主要イベントとの関係を探る

2014-23年:10年間の金相場変動と主要イベントとの関係を探る

2014年から2023年までの10年間における金相場の変動を前期後期に分けて、分析したうえで背景にある主な出来事との関連性を見ていきます。金は投資や宝飾品としての需要だけでなく、世界経済や地政学的な情勢によって価格が大きく変化する場合があります。本記事を通じて過去10年間の金価格の変動要因を明確にしたうえで、今後の金相場を考察する上で重要な視点を提供するので参考にしてください。

2014-2018年:世界経済の安定と金相場の停滞

2014-2018年:世界経済の安定と金相場の停滞

2014-2018年は、主に次の出来事がありました。それぞれの出来事は金相場に大きな影響を与えています。

・アメリカ経済回復と金融緩和縮小
・原油価格の変動とインフレ期待の低迷
・プラチナ価格の急落

アメリカ経済回復と金融緩和縮小

2014年から2018年頃までの金相場は、比較的安定した推移を見せました。主な理由として、アメリカ経済の回復基調が挙げられるでしょう。世界経済の中心であるアメリカの景気が上向いたことで、投資家の株式市場などへの資金流入が進みました。また、アメリカ連邦準備制度(FRB)が量的金融緩和策の段階的な縮小を進めたことも、金価格が高まらない要因の1つです。

金融緩和の縮小は金利の上昇につながり、無金利資産である金の投資妙味を低下させるためです。加えて、世界的に大きな地政学的リスクや経済危機が発生しなかったことも、安全資産としての金の需要が高まらない要因となりました。

原油価格の変動とインフレ期待の低迷

2014年から2018年頃までの金相場の安定は、原油価格の変動とインフレ期待の低迷も影響しました。原油価格は世界経済の動向と密接に関連しており、価格の低迷はデフレ懸念を高め、インフレヘッジとしての金の魅力を低下させます。2014年後半から2016年にかけて発生した原油価格の下落は、世界的なインフレ期待を抑えて金価格が高まらない要因の一つとなりました。

さらに、主要国の金融政策が緩和的な方向に向かう中で、インフレ率がなかなか目標水準に達しない状況が続いたことも金価格が上がらない要因となったのです。したがって、原油価格の動向とインフレ期待の低迷は、金相場が大きな上昇を見せることなく推移した背景として重要な要素と考えられるでしょう。

プラチナ価格の急落

プラチナの価格が急落したことも金相場の相対的な安定感につながりました。2015年に発覚した自動車の排ガス規制不正問題は、ディーゼル車への信頼を大きく揺るがし自動車触媒としてのプラチナ需要を激減させました。

また、工業用途の需要が大部分を占めるプラチナの価格低迷は、投資家の間で貴金属全般に対する懸念を生じさせた可能性があるといえるでしょう。しかし、宝飾品や投資対象としての根強い需要を持つ金は、プラチナのような特定産業の動向に左右されにくいため相対的に価格が安定しました。

2019-2023年:地政学リスクとコロナ禍による金相場の高騰

2019-2023年:地政学リスクとコロナ禍による金相場の高騰

2019年から2023年は次のように、世界中の経済を不安定にするような大きな出来事があり金相場が高騰する要因となったのです。

・米中貿易摩擦と世界経済の不確実性
・新型コロナウイルス感染症拡大と金融緩和

米中貿易摩擦と世界経済の不確実性

2019年以降、金相場は明確に上昇傾向を示しました。大きな要因の一つが米中間の貿易摩擦の激化です。世界経済の成長を牽引してきた二大国の対立は世界経済の先行きに対する不確実性を高めたことで、投資家はリスク回避をする姿勢を強めました。

さらに、安全資産としての金への投資が活発化したことで金価格を押し上げる力となりました。貿易摩擦による経済の不透明感は株式市場の変動性を増大させ、相対的に安定した価値を持つ金への資金流入につながったのです。したがって、米中貿易摩擦は金相場が長期的な上昇トレンドに入るきっかけとなった重要な出来事といえるでしょう。

新型コロナウイルス感染症拡大と金融緩和

2020年初頭から世界的に拡大した新型コロナウイルス感染症は、世界経済に深刻な打撃を与え金融市場に大きな混乱をもたらしました。コロナの影響が出だしたころは他の資産と同様に金価格も一時的に下落しましたが、その後、各国中央銀行の大規模な金融緩和政策が実施されると金価格は急速に回復し上昇基調を強めました。

また、金融緩和によって市場に大量の資金が供給された結果、インフレ懸念が高まりインフレヘッジとしての金の需要が増加したのです。つまり、コロナ禍における経済の不確実性と大規模な金融緩和は金価格を大きく押し上げる要因となりました。

まとめ

2014年から2023年の10年間における金相場変動を振り返ると、世界経済の動向や地政学的なリスク、予期できないパンデミックといったさまざまな要因が複雑に絡み合い、価格を大きく左右してきたことがわかります。

2014年から2018年までは、世界経済の安定とアメリカの金融引き締めによって金相場は比較的落ち着いた動きを見せましたが、2019年以降は、米中貿易摩擦や新型コロナウイルス感染症の拡大、地政学的リスクの増大によって金相場は顕著な上昇傾向を示した結果となりました。


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